1学期最終の「チュータのひとりごと」は,今年度の「進学のしおり」の巻頭言を掲載いたします。
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「はじめに」
校長 中村道郎
わたしが本校に赴任してから,ほぼ20年間,英語科のメンバーの一人として自分の目標としたのはたった一つ,担当する生徒をどのようにして全国トップの成績に導くかということでした。
授業を工夫する中から,単語や熟語,またモデル・センテンスをテストノートに書かせる小テストや,さらに事後指導としての「カキカキ」,そして,授業以外の課題をチェックする「昼休みチェック」,OHP(オーバーヘッドプロジェクター)を用いた解説,授業のガイドとなる「CHUTA BOOK」などが生まれました。
そのようにして着実に実力をつけた高3生の担任をしていたときに,ある先生から,成績がよければ態度はどうでもよいのかという苦言をいただいたことがあります。男子校の時代の話で,当時,服装や授業態度などにおいて少し問題があると指摘を受けても仕方のない生徒が一部にいたのは事実です。
わたしは,そのときに,愛光の教育の先には「世界的教養人」と「愛と光の使徒」が見えてなければならないのだということを教えられたような気がしました。
校長に就任後,ある会議の席でわたしは次のように述べました。
― 本校の教育は一言で言えば,「世界的教養人」を育てること,これが愛光学園の実に明快なマニフェストであると言っても過言ではないとわたしは思っています。学園での諸活動は,すべて,「世界的教養人」の育成に繋がるものでなければなりません。学校という組織の中で行われる活動は,どのようなものであっても,そこに,教育的意義がなければならないことは当然のことです。本校では,授業をはじめ,諸行事,部活動など,あらゆる活動の先に「世界的教養人」が見えて初めて,愛光の教育と言えると思うのです。(中略)
本校の世界的教養人教育とは,人間の文化において調和した「教養人」をベースに,特に学問,道徳の分野で一段と秀でた「社会のよきリーダー」を育成することであるとわたしは考えています。
全人格的陶冶を図りつつ,学問の理想である真理の探求と,道徳の理想である善と宗教の理想である聖なることの追求,これが世界的教養人の姿であると思うのです。
大学入試の結果は,このもう一歩進んだ教育が達成されたかどうかを問うものではないでしょうか。―
この話をしたきっかけは,高3の担任をしていたときに指摘された上記の出来事にあります。
本校が進学校であるということは自他共に認めるところです。しかし,進学の実績は,本校の教育の理念の実現を目指した結果に伴って出てくるものであって,実績だけが一人歩きをしてはならないのだということをよく理解しておかねばならないと思います。
愛光の使命は次の二つです。
1 高い知的レベルの教育を授けて,社会の要望に応えること。
2 高い道義的理念を掲げて,日本と世界に光を与えること。
進学実績の向上はこの使命を達成するためのものであることを忘れてはなりません。
この「進学のしおり」は主に大学入試と進学実績を紹介するものですが,建学の理念を思い描きながら目を通していくと,より一層の意味があるのではないかと述べて巻頭言とします。
51期生の諸君と担当する先生方が,生徒と生徒のティームワーク,生徒と先生のティームワーク,そして先生と先生のティームワークを組んで頑張ってくれることを期待しています。
今年度の「進学のしおり」が出来ました。