入学式式辞(2) ※先週の続きです。
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それでは教養人という言葉はどのような意味を持っているのでしょうか。教養という言葉を辞書で調べてみると,「単なる知識ではなく,人間がその素質を精神的,全人的に開化・発展させるために,学び養われる学問や芸術など」と説明されています。
この学問と芸術に,道徳,宗教,身体,生活を加えると,文化の持つ6つの分野が揃うことになります。この6つの分野が調和をし,しかもそれぞれのレベルが世界のどこにおいてもなるほどと思われる高さと深さを持っていることが世界的教養人の条件ということになるでしょう。
特に,学問を除く道徳,宗教,芸術,身体,生活の分野を大学受験に関係がないからと言っておろそかにするような人間は,真の世界的教養人を目指している人間とは言えません。
平成13年にノーベル化学賞を受賞した野依良治さんはこのことを産経新聞の記事の中で,「今はわたしたちの時代に比べて統計的にみても,大学入試競争は緩和されています。学校が責任をもってきちんと生徒を教えれば,学習塾などいらないはずです。成績向上のために塾に充てている時間を文学や美術,音楽などの素養を身につけるのに使うべきです。教科の力だけでは,世界の人々と肩を並べて生きてはいけません。わたしは『男子たるもの気力と体力を鍛えなければ』と柔道をやっていました。師範や先輩から集中力や礼節,人間社会の規範などを学びました。それらはすべて勉学にも跳ね返ってきました。」と述べています。
どの教科,どの科目も,皆さんを世界的教養人として育成するために大切であることを入学式に当たって述べておきます。
さて,今の希望とやる気を失わないためにもう一つ大切なことがあります。
それは,自分の目標,つまり夢を持つことです。そして,いったん,その夢を決めたら,そこから夢の実現に向けて,一歩一歩着実に努力を続けることです。このこつこつと続けることが道を究めることに繋がるのです。とても難しく苦しいときもあると思いますが,それは神様が自分に与えてくださった試練の道であると思い,試練に耐えて努力を続け,さらに進んでいけば,神様が人間の努力に対してつけてくださる道筋が見えてくるとわたくしは信じています。神様のほうが,「あれだけ努力している人間を放ってはおけない。」と思うところまで,努力を積み重ねることが大切なのです。
それでは,夢の実現に向けて努力を続けることが可能となる,皆さんにとっての原動力は何でしょうか。それは,今,皆さんの周りにいる友人の有形,無形の励ましであり,ここ愛光学園で皆さんを担当する熱と光ある先生方の皆さんに対する熱き思いです。
ここにいる一人ひとりが持つ夢は異なるでしょうが,自分の夢の実現に向けて共に頑張る友人がいるということが,何よりの励みとなるのです。友人は皆さんの宝であると思って,仲良く友情の輪を広げていってください。特に新しい友人との出会いによって,友情が芽生え,一生付き合える親友ができることが,本校に入学した大きな意味の一つであると言えます。そして,友人やサポートしてくださる先生方との交流を通して,夢の実現に向け,頑張ってもらいたいと思います。
ご父母の皆様への挨拶(省略)