本校第1期卒業生の「いつき会」によって,初代校長田中忠夫先生が第1期生(昭和34年卒業)から第20期生(昭和53年卒業)に話された歴代卒業式式辞が昭和63年に1冊の本として出版されたことは,皆様,ご存知のことと思います。
わたしは校長に就任させていただく前に,すべての式辞を拝読させていただきました。そして,今年の春休みにもう一度読ませてもらおうという気持ちになり,通読しました。そのとき,わたしはあることに気がついたのです。
式辞の中に,「世界的教養人」という言葉があまり見つかりません。20回の式辞をすべてパソコンに打ち込み,検索をしたところ,何と「世界的教養人」という言葉は,たった1度しか出てきません。「教養人」という言葉は6度使われていますので,すべてを合計したとしても7度しか使われていないのです。
それに対して,「愛と光の使徒」という言葉は,20回すべての式辞の中に登場します。このことは,田中先生が愛光学園で「愛と光の使徒」を育てるという高邁な理想を抱いていたことをよく示している事柄であると思うのです。
「愛と光の使徒」について,初代校長田中忠夫先生は次のように定義しています。
――世界的教養人としての深い知性に裏づけされた確乎不動の信念と,清らかな人生観よりにじみ出る高潔な徳性を堅持し,世の光となって,日本と世界に尽くす人――
分かりやすく一言で言えば,「give and give の精神を持った教養人」ということだと考えています。与えっぱなしという生き方であります。
アインシュタインも We exist for our fellow-men. 「人間は他人のために存在する。」と述べています。
ここにお集まりの同窓生の皆さんは,まさしく,「愛と光の人」を目指す者の集団であると申し上げてよいのではないかと思っています。
今後も同窓生のお立場で,様々なご助力をいただけることを願いまして,挨拶とさせていただきます。