わたしは予言や占いなどを信じないタイプの人間であるが,40年近く前にアメリカ合衆国を初訪問した後,授業中に生徒に向かって,「1ドル100円の時代が必ずやってくる。」と何度も予言(?)したことを記憶している。当時1ドルは,わたしの記憶が正しければ360円であったように思う。なぜ,この時代に「1ドル100円の時代が必ずやってくる。」と言ったかというと,それはドルを合衆国で使用してみて,1ドルは100円と対等であると実感したからである。
数年後,交換留学(短期ホームステイ)で,生徒たちを引率してロスアンジェルスのノースハリウッドにあるハーバードスクール(男子の中高一貫校・中学2年,高校4年)を訪問した。その時に,教員の給与について聞いたところ,同年代の教員の給与が日本の教員の3倍であった。このことも1ドルが100円の時代がやってくると確信した理由の一つであったかも知れない。
この交換留学引率の時には,わたしもホームステイである家族に大変お世話になった。その家庭は家族3人で,ハウスボーイが一人いた。車が5台あり,父親はロールスロイス,母親はシボレー,息子も外国製の高級車を所有しており,ハウスボーイは日本人で,彼も車を1台所有していた。そのほかにも車が1台あった。
交換留学を記念し,100人以上の関係者を招待してディナーパーティーを開いてくれたが,リビングルームはその人数に十分対応できるほど広々としていた。家の横にプール,その後にテニスコートが続き,そしてテニスハウスがあった。そのテニスハウスが現在のわたしの家よりも敷地面積が広いのだから,土地の広大さが想像できると思う。
大変リッチなアメリカ人のご家庭にお世話になったと考えていたが,周りの人たちから普通よりも少し上だと聞かされて,アメリカという国はどうなっているのだろうと不思議に思ったものである。
また日本人のハウスボーイは給料をもらいながら語学学校に通っていた。ひと月の授業料が多分1ドル以下であった。アメリカで暮らす人たちに早くアメリカに慣れ親しんでもらいたいという素晴らしい試みであると感じた。
今や1ドルが90円の時代であるから,教員の給与の水準はアメリカとそれほど変わらなくなった。おそらく日本人の生活のレベルもあがり,豊かになったと言えるであろうが,わたしが40年前に訪問したノースハリウッドが,現在どのように変化しているのか,大変興味がある。機会があれば,40年経過した同じ街を訪問し,アメリカと日本がどう変化したのか,自分の目で確かめたいと思っている。