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チュータ日誌

チュータのひとりごと 第294回(声)

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わたしは人一倍,自分の声の調子を気にかけている。おそらく,高校時代に放送部でアナウンス部門を担当したことが大きく影響しているのであろう。

高2のときに,高校放送コンテスト愛媛県大会の「アナウンス部門」に出場し,たまたま2位になり,高3では,同じ「アナウンス部門」で優勝し,2年連続で全国大会に出場させてもらったことは以前の「ひとりごと」でも触れた。

 その頃の特訓の成果が今でも継続()しており,マイクを通して自分の声が響いた瞬間,マイクとスピーカーの性能を意識するようになった。地区別懇談会や入試説明会で会場に到着して,わたしが最初にチェックするのは,マイクを通した自分の声の響きである。不思議なもので,スピーカーの性能も関係しているのであろうが,気持ちよく話せるマイクとそうでないマイクがある。最近はワイヤレスマイクが多くなり,性能も良くなっていると思うのだが,場所によっては,声をどのように工夫しても,気持ちよく話せないマイクやスピーカーがある。

 自分の声が気持ちよく響くと,気持ちがうきうきし,間の取り方とか,気持ちの込め方とか,話す内容にまで好影響を与えてくれる。

 学校の体育館のマイクには「ワイヤレス」と「ワイヤード」の2種類がある。ワイヤレスは少し声が高くなり明瞭に聞こえる。2種類ともダイナミックマイクで単一指向性であるが,ワイヤードは少し声が低くなり,聞き取りにくい。スピーチは声が少し高めで,明瞭であるほうが聞きやすいようである。どうやら,マイクにもいろいろと種類があるようだが,業者に依頼すると,決まってスピーチ&ボーカル用のマイクを用意してくれる。

 今回の「ひとりごと」は,マイクやスピーカーの性能とは全く関係のない,わたしがのどを痛めたため全く発声できなくなったことについての報告である。

 5月は県外及び県内出張が連続し,少し疲労がたまっていたのかもしれない。自分としては快調に職務をこなしていたつもりであった。中間考査の最終日に風邪気味かなと思いながらも,たいしたことはないと気にも留めず,中3の地区別懇談会に出席した。全体会と懇親会の席で,声の調子が良くないと気づいたが,よくあることなので,かまわずご父母と話を続けた。

 翌日,起床して驚いた。声が全く出ないのである。翌日の月曜日には中1の宿泊研修(23)が控えていたので,とにかく声が出ることを願って,できるだけしゃべらないようにした。しかし,月曜日の朝も声がまともに出ない。もともと,のどを使って発声しているためか,調子の良いときはいいのだが,いったん調子を崩すと復活するのに時間がかかる。

 中1の宿泊研修では,二日目の夜にキャンドルサービスがあり,わたしの役目が「火の長」でスピーチをすることになっている。生徒たちに聞こえる声が出るかどうか不安であったが,できるだけ発声を控えてスピーチに備えた。

 少し実声が出るようになっていたので,マイクをきちんと使用すれば,少なくとも聞いている者に理解できる話ができるという気持ちになり,スピーチの時間まではできるだけしゃべらないようにした。

 キャンドルサービスが始まり,「火の長」が話す場面がやってきた。わたしのかすれ声に,生徒たちは一瞬驚いた様子ではあったが,マイクのおかげで何とかスピーチができた。これほど,自分の声に気を遣ったことはこれまでにない。しかも,良い声で響くかどうかではなく,生徒たちにきちんと聞こえるかどうかという気遣いであるから,少々やっかいである。

 研修最終日の閉校式でも,まだ声はかすれていたが,マイクを用意してもらって何とか挨拶ができた。

 声を出せることが,これほど有難いと思ったことは今までになかった。普段,当たり前だと思っていることが,実は当たり前ではないということは,しばしば言及されることである。健康であることを当たり前であると思っていると,わたしのような経験をすることになる。今回の「声がれ」は健康であるときに,健康に感謝の気持ちを持って人生をおくらなければならないということに改めて気づかせてくれる出来事であった。


2013年1月

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