● 時代に沿った進学先や学部選定について
本校は,理系志望が全体の3分の2,そのうちの半分が医学部志望ですが,最近,理系の志望者数が増大しており,それも,医学部の志望者数が増える傾向にあります。特に医者の子弟は医学部を希望するケースが多い,という傾向が見られます。
医学部であれば,研究医,臨床医の違いはあっても,医者になることが約束されるわけですから,安定志向の表れであろうと思います。これは,他の進学校でも同じ傾向があるようです。
また,本校では景気がよくなると理系,文系を問わず,東大の志望者が増え,景気が悪くなると国公立大医学部の志望者が増える傾向が見られます。これは,親の希望や社会の変化が,中・高生の志望に大きく反映されている結果ではないかと思われます。
● 現在の高校生の気風
高校生の気風はどのように形成されるか。
家庭環境と社会環境から形成されるのですが,その割合は50:50だとわたしは考えています。また,通学した小・中学校の教育環境を社会環境の中に含むという考え方にわたしは立っています。従って,高校生の気風は,家庭環境と,小・中学校時代に,どのような教育を受けてきたか,また高校時代にどのような教育を受けるかで,ほぼ決まるのではないでしょうか。つまり,高校生を取り巻く家庭環境と社会環境が高校生の気風を作り上げていると言えます。そして,現在のように,価値観が多様化する世の中で,その影響を受けた高校生の気風をgeneralizeするのは難しいと思うのです。
ただ,私立学校には,先ほど申し上げた「建学の精神」というものがあり,たとえば愛光であれば,「世界的教養人の育成」を目指すことが「建学の精神」の柱となっています。つまり,知性と徳性にすぐれた人物を育成しようと努力するのですから,そのような気風を持った生徒が育つのは,当然であると考えると,高校生の気風は,家庭教育と学校教育を含む社会教育の両方で作り上げられるものであると言えるのではないでしょうか。
現在の生徒の気風の例を挙げるとすれば,批判精神が,主観的批判から,客観的批判に変わる時期
授業評価の各学年の平均点からも言えるのですが,中3,高1の時代は,主観的批判,つまり,自分に合うかどうかだけで判断することが多いようです。これが,反抗期なるものではないでしょうか。
ところが,高2,高3になると,次第に,知性や徳性が深まることによって,客観的批判に変わってきます。子どもから大人への仲間入りを果たすのは,この17歳から18歳の間であるように思われます。以前は,もう少し大人の仲間入りが早かったように思います。
大学入学試験における変化は,第1志望の大学に何としてでも合格しようという,つまり浪人してでも,第1志望の大学を目指そうとする生徒が減ってきています。第2志望に合格すると,そのまま手続きをするケースが増えているのです。また,難関国公立大を目指している生徒でも,国公立が不合格になると,私立大に入学するケースが増えています。つまり,現役志向が高まっているということです。
また,共学化して,8年が経過しましたが,藤岡学長の頃と違って,蛮カラからハイカラ(high collar)になったように思われます。