一杯のみそラーメン
中学の担任をしていた頃の話である。ある日,担当学年の生徒の一人が横にやってきて,「先生,相談があるんです。」と少し心配そうな顔をしている。「よし,今度ラーメンを食べに行こう。」と言うと,きょとんとした顔をしている。「なんだ,ラーメンは嫌いか。」と言うと,「いえ,そんなことはありません。」ということで,土曜日の昼に,いっしょにラーメン屋に行くことにした。
約束通り,土曜日の午後,車に乗せて,ラーメンのおいしい店へ連れていった。わたしは,みそラーメンが大好きで,注文すると,彼も同じ品を注文した。
彼は,車に乗ったときから,故郷や,家族の話などをしていたが,店に入っても,別に彼の「相談」はない。店の中でも,学校での面白い話や,楽しい話が続いた。結局,ラーメンがおいしかったということで,彼との話は終わった。
その後,彼の表情から心配そうな様子は,全く消えてしまった。ラーメン店では,世間ばなし以外の話は何もしなかったのにである。ただ一杯のみそラーメンを食べたに過ぎない。まるでみそラーメンに心配事を解決してもらったようなものである。
高校の卒業式の日,高Ⅲの担任の先生から,「職員室に挨拶にいきましたが,不在でしたので,お世話になったと伝えてください。」とわたしに伝えてほしいという,彼の伝言を受け取った。
まさしく,黄金のラーメンであった。
中学の担任をしていた頃の話である。ある日,担当学年の生徒の一人が横にやってきて,「先生,相談があるんです。」と少し心配そうな顔をしている。「よし,今度ラーメンを食べに行こう。」と言うと,きょとんとした顔をしている。「なんだ,ラーメンは嫌いか。」と言うと,「いえ,そんなことはありません。」ということで,土曜日の昼に,いっしょにラーメン屋に行くことにした。
約束通り,土曜日の午後,車に乗せて,ラーメンのおいしい店へ連れていった。わたしは,みそラーメンが大好きで,注文すると,彼も同じ品を注文した。
彼は,車に乗ったときから,故郷や,家族の話などをしていたが,店に入っても,別に彼の「相談」はない。店の中でも,学校での面白い話や,楽しい話が続いた。結局,ラーメンがおいしかったということで,彼との話は終わった。
その後,彼の表情から心配そうな様子は,全く消えてしまった。ラーメン店では,世間ばなし以外の話は何もしなかったのにである。ただ一杯のみそラーメンを食べたに過ぎない。まるでみそラーメンに心配事を解決してもらったようなものである。
高校の卒業式の日,高Ⅲの担任の先生から,「職員室に挨拶にいきましたが,不在でしたので,お世話になったと伝えてください。」とわたしに伝えてほしいという,彼の伝言を受け取った。
まさしく,黄金のラーメンであった。