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チュータのひとりごと

2001年1月アーカイブ

 懐勉...懐中電灯を用いて消灯後に勉強をすること(2)

 ある時,当時の寮務課長から,次のような舎監の声を聞いた。それは,「先生の中に,懐勉を推奨している人がいる。」という不満の声であった。話をよく聞いてみると,寮の舎監が懐勉をしている生徒に注意をしたとき,ある先生が,「懐勉をしても良いから予習や,宿題を終わらせるように...。」と指示をしたというものであった。舎監は「寮として困るので何とか改善してほしい。」と厳しい口調でさらに付け加えたという。もっともな話である。

 この話を聞いて,はたと思い当たることがあった。英語の授業中に,予習をしていない生徒がおり,わたしが,この生徒に向かって,「予習をやらずに授業に臨むとは何事か。」と問い詰めたのである。すると,その生徒は,「他の教科の学習をしていたので,気が付いた時には消灯時間になってしまい,英語の予習をする暇がありませんでした。」と言い訳をした。わたしは,すかさず,「その日にやるべきことを終えずに,就寝するとは何事か。やるべきことは,どんなことをしてでも終わらせるのが男というものではないか。」と切り返した。ここまではよかったのだが,言わずにおけばよいものを,最後に「懐勉でも何でもやって終わらせてこい。」と一喝したのである。

 この言葉をおそらくその生徒は懐勉をやってよいと受け止めたのであろう。こうなると問題は懐勉をした生徒にあるのではなく,言った自分の方にあると言ってよい。

 叱る時は,よほど言葉を慎重に選ばないと,このような結果になることがよくある。間違った叱り方をすると,何のために叱ったのか分からないだけでなく,かえって逆効果になってしまうことを教えてくれる例となってしまった。

 最近職員室で懐勉の話を聞くことがなくなってしまった。少し寂しい気がするというと,またお叱りを受けるだろうか。
懐勉(消灯後に懐中電灯を用いて勉強をすること)

 夜中に「懐勉」をすることは,寮則で禁じられている。理由は目に悪いだけでなく,睡眠時間も短くなり,健康面に問題があるからである。しかし,生徒にとってみると,宿題や予習が終わっていなければ,当然のごとく教員から叱られることになる。そこで,懐中電灯を使ってでも予習や宿題をしようということになる。ただ,明かりはドアの隙間から漏れるので,舎監や教員に見つからないようにするには,この隙間に目張りをせねばならない。それぞれ工夫を凝らして,廊下側に明かりが漏れないようにするのだが,ドミニコ寮よりもトマス寮のほうが作業がしにくい。それはトマス寮の廊下側のドアの上に天窓がついており,この天窓にも覆いをせねばならないからである。

 もっとも,廊下側はよく工夫がされていて,先ず明かりが漏れることはない。たださすがに南北に面している大きな窓までは覆うことができない。つまり,寮の外に出てみれば,どの部屋に明かりがついているかが分かるのである。冬の寒い夜に寮の外に出るなどということは,あまり気が進まなかったが,指導ということになれば,致し方ないと思い,夜中の2時,3時に外に出た。違反を見破られた(?)生徒は,なぜ見つかってしまったのだろうかと誰もが不思議そうな顔をしていた。この時,学習以外のことに利用していた懐中電灯は遠慮なく没収したが,学習をしている生徒からそれを取り上げることはしなかった。学校の教員という立場と舎監としての指導のあり方を考えさせられる難しい場面であった。

教務のひとりごと(10)

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 「チュータ」の由来

 昨年の「ひとりごと」は愛光での寮生活で終わったが,まだまだ寮生活について述べたいことはたくさんある。ただ,今回は,新年初の「ひとりごと」なので,よく質問される「チュータ」の由来や,エピソードについて少し紹介してみたい。

 チュータというニックネームは,わたしが教員になったばかりの4月に生徒がつけたものである。たしか中学2年生の女子生徒がつけたと記憶している。現在でもそうだが,わたしはどちらかというと,動き回るタイプの人間なので,こんなニックネームをもらったのであろう。ねずみのチュータということである。また中村の中を「ちゅー」と読むために,その後ろに「た」とつけて,「チュータ」と呼ぶようになったという話も聞いたことがある。

 赴任した当時のこの中学では,先生もお互いにニックネームで呼び合っていた。今でもよく覚えているのは,「ノミさん,ウマさん,カッパさん,チンタラさん,パチクリさん,ピーさん」などである。もちろん当時のわたしのような若い教員が,先輩教員をこう呼んでいたわけではない。

 生徒がわたしに用があるとき,職員室で「チュータ先生」と呼ぶことがよくある。他の先生方は,最初驚いていたようだが,今では全く当たり前になってしまった。先生の中にもそう呼ぶ人がいる。おそらく,本校の教員のニックネームの中で,オープンに呼べるものは,「チュータ」だけであろう。わたしは,このような誰もが親しみを持って呼べるニックネームをもらって,とても幸せだと思っている。

 ある時,生徒の母親から1通の手紙を受け取った。宛名に「中村忠太先生」と書いてあるのでびっくりした。郵便配達の人も迷ったのではないかと思うのだが,自宅の郵便受にちゃんと入れられていた。後日,「子供がいつもチュータ先生と呼んでいるものですから,てっきり本当のお名前だと思い,忠太先生と書いてしまいました。申し訳ございませんでした。」と丁重なお詫びの電話があった。

 30年前に教えた生徒も,昨年卒業した生徒も,出会った時には,「チュータ先生!」から会話が始まる。教員になっていてよかったなあと思う瞬間である。

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