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チュータのひとりごと

教務のひとりごと(43) ・ 参観日/学級懇談会(昨日)

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 信頼(先週のつづきです)

 ある時,A部長は塾(寮)の隣にある自宅にわたしを呼んで,塾(寮)で父母会を開くのでお菓子を用意するように言った。その時,「このようなお菓子がいいんではないか。」と言って,応接室のテーブルの上に置いてあった器の中から菓子を取り出した。後で分かったのであるが,レーズンウイッチという菓子であった。

 わたしはこの時,「このような」という言葉を即座に「この」と置き換えた。幸い,レーズンウイッチを包んでいる透明のビニールにK店の名前を見つけた。店は自由が丘にあることが分かり,わたしはこの菓子を買うため,東名高速道路を経由してこの店に出かけた。

 翌日,この菓子を持って,部長のところに行き,「お菓子が手に入りました!」と言うと,部長は驚きと喜びの表情を顔に表して,「うん。」とうなずいた。

 この時から,部長のわたしに対する態度は明らかに変化したように思う。

 部長が中学部を去り,高等部長になるとき,お別れの言葉の中で,わたしのことを一言誉めてくれた。これを聞いた年配の先生が,「わたしは長年A部長と一緒に仕事をしてきたが,部長が教員を誉めたことは一度もなかった。君はいったいどのようなことをしたのか。」と尋ねた。わたしは「多分お菓子でしょうね。」と答えたが,その先生はおそらく何のことかは理解できなかったであろう。

 わたしはこの時から,どのようにすれば人が心を動かすかを考えるようになった。

 あたり前のことをあたり前にやっていては,人の心を動かすことはできない。

 人の心を動かすためにどんなことをすべきか,日々奮闘努力する中に,教師の苦労や楽しみもあるのではなかろうかと述べて今回の「ひとりごと」を締めくくりたい。


 

2013年1月

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