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チュータのひとりごと

教務のひとりごと(64)

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 物を大切にする心

 中2生のNHKの基礎英語を指導するために,寮を訪れるとき,寮食をいただくことにしている。

 先日,学習時間に流したNHKの放送の中に,「terrible」という単語が出てきた。「ひどい」という意味で使われているのだが,わたしは,この単語をとっさに次のように説明した。

 「今日の寮の夕食はどうだった。」「Terrible.」

 生徒の間から,笑いが起こった。

 寮の食事については,生徒たちは,いろいろ思いがあるようだ。しかし,本校の寮食は,少し冷めていることを除けば,かなり質の高い食事であり,決して「terrible」なものではないとわたしは思っている。

 寮から自宅への帰り道,自分が幼い頃,牛乳が手に入らなかったこと,バナナが高価で,とても買えるようなものではなかったことなど,貧しかった時代の生活を思い出した。

 わたしと同年代の人なら誰でも経験していることだが,牛乳は,病人の飲み物であり,誰でも飲めるものではなかった。病人の体力を早く回復させるためにのみ存在するものだと,子供心に理解していた。

 そう言えば,食べるものがなくて,芋粥とか野菜の漬物をたらふく食べたことが記憶にある。皿に山のように盛られた白菜の漬物を一人で食べてしまって,叱られたうえに,おなかの調子を悪くしたことが何度もあった。

 米のご飯を腹いっぱい食べることができるようになったのは,わたしが高校時代の頃からではなかったろうか。

 物を大切にする心は,この貧しさの中で養われたものであろう。鉛筆一本なくなったというだけで,大騒ぎになった。

 今の子供は,物の豊かな時代に育っているために,われわれの時代よりも,物を大切にする心を養うのが,難しくなっているのは誰しも感じることである。

 物は無限ではないということを理解しておく必要がある。それと同時に,人と同じように,物にもそれぞれの役割があり,それが十分に生かせるよう,人が配慮しなければならない。そういった配慮が,物を大切にすることにつながっていくのではないだろうか。

 物が豊富な時代だからこそ,物の大切さを教えることに価値があるように思えてならない。


2013年1月

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