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チュータのひとりごと

教務のひとりごと(95) ・ 徳永浩人君1周忌

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わたしが東大に合格させた(?)たった一人の生徒(3)

 彼の父親が後日手紙で知らせてくれて分かったのであるが,1日目の試験が終わった時に,彼は,「今日の試験で東大のレベルの高さがよく分かった。もう明日の試験は受けたくない。帰ろう。」と父親に告げた。父親はそれを聞いて,「チュータ先生と最後まで頑張ると約束したじゃないか。最後まで受けて帰ろう。」と彼を励ましたそうである。彼もその父親の言葉を聞いて考え直し,とにかく試験だけは受けて帰ることに決めた。

 このような状況であったので,彼も彼の父親も,合格などということは全然考えていなかったようである。しかし,わたしは,上記のような状況については全く知らされていなかったせいもあるが,彼が合格すると信じていた。

 そして,合格発表の日,彼は興奮した声で,「先生,合格しました。」と電話で学校に報告してきた。わたしは,「あれだけ慶応,慶応と言ったのだから,慶応にするか。」と聞いたところ,「いや,もちろん東大です。」という返事が返ってきた。

 それから数日して,彼の自宅から電話があり,合格の余韻に浸るN君と話をしていると,電話の向こうでかなりの人声や物音がしている。どうしたのかと尋ねると,彼が住む地域で初の東大合格者が出たということで,お祝いの宴会を開いているということであった。ご両親の喜んでいる姿が目に浮かび,クラス担任でなければ味わえない喜びを与えてくれた彼と彼の両親に感謝したい気持ちでいっぱいになった。

 タイトルにある通り,確かに,わたしが彼に東大を受験することを勧めなければ,彼は東大を受験することはなかったであろう。しかし,彼が合格したのは愛光の6年間で十分に実力をつけていたからである。つまり,生徒たちは自分の実力で大学合格の栄冠を勝ち取るのであり,その手助けをするのが教員であると,わたしはいつも考えている。そして,その手助けの方法を生徒と一緒になって考えるのが教師の楽しみかもしれないと思ったものである。

   おわり

2013年1月

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